市販薬と上手に付き合いましょう

 昨年秋ごろからテレビや雑誌などで「インターネットで薬が買えなくなる」と話題になっています。この背景には、適正な使用と規制緩和を目的とした薬事法の改正(2009年6月施行)による一般用医薬品(以後市販薬)の販売制度の変更があります。手軽に手に入れることの出来る市販薬、この機会にお薬のことをよく知って上手に活用しましょう。


1. どう変わる?新販売方法

 今回の法改正の一番の目的は、薬剤師以外に薬の購入をサポートする専門家(登録販売者)を増やして、安全で適正な販売制度を確立することです。
 現在は、本来受けるべき薬剤師の説明を受けないまま、どの市販薬でもお客さんが自由に薬を選んでレジに並ぶ、いわば素人が素人に薬を売っている状況があります。そこで、薬のリスクや効能・効果についての正確な情報提供が出来る登録販売者を育成して、きちんと情報提供をし、かつ、薬剤師以外でも市販薬を販売できるようにすることで市場拡大のニーズにも応えようというのが今回の法改正の主旨です。

(1) リスクに応じて3つに分類されます

 市販薬といっても副作用などのリスクの程度はさまざまです。そこで、新しい販売制度では、これまで一律だった市販薬が、リスクの程度に応じて以下のように3つの区分に分類されました。この分類は薬の箱に明記されます。

* 第一類(特にリスクが高いもの): 一般医薬品として使用されることが少ないなど、安全性上特に注意が必要な成分を含むもの。(例)H2ブロッカー含有薬、一部の毛髪用薬など。

* 第二類(リスクが比較的高いもの): まれに入院しなければならないほどの健康被害が生じる可能性がある成分を含むもの。(例)主な風邪薬、解熱鎮痛薬、胃腸鎮痛鎮けい薬など。

* 第三類(リスクが比較的低いもの): 日常生活に支障を来たすほどではないが、身体に変調・不調を起こす恐れのある成分を含むもの。(例)ビタミンB・C含有保健薬、主な整腸剤、消化剤など。

(2) リスクに応じて販売の仕方が規定されます

 第一類医薬品が販売できるのは薬剤師のみで、購入者に対して薬剤師が文書で説明をすることが義務づけられます。第二類、第三類医薬品に関しては、登録販売者による販売が可能です。

(3) コンビニや家電量販店などで市販薬が買えるようになります

 市販薬の販売は、これまで薬剤師が常駐する薬局・薬店に限られてきましたが、法改正によりコンビニなどでも市販薬が購入できるようになります。

(4) ネット販売を含む通信販売は第三類医薬品のみになります

 インターネットや電話注文で郵送してもらういわゆる通信販売は第三類医薬品のみとなってしまいました。ただし、世論や業界の反対も多く、厚生労働省は検討会を設置し検討を始めたので、結果次第では省令の改正も有り得ます。

2. 市販薬を買うときに気をつけたいこと

 販薬は医師の処方がなくても買えるため気軽に購入出来ますが、全て自己判断、自己責任の下で購入および使用しなければなりません。そこで、購入の際に特に気をつけたいことは次の2点です。

(1) 自分の症状に合っている薬か

 水虫なのにただの湿疹だと思ってステロイド剤を塗ってしまうと症状が悪化してしまうなど、症状に合っている薬を使用しないとかえって悪化してしまう場合や副作用をまねいてしまう場合があります。自己判断や思い込みで薬を購入せずに、薬剤師や登録販売者に相談して自分に合った薬を薦めてもらいましょう。

(2) 副作用にはどのようなものがあるのか

 みなさんが良く知っている副作用は「風邪薬や花粉症のお薬は眠くなる」などでしょうか。安全性の高い市販薬といえども副作用はあります。薬の箱の裏には副作用や注意点が書いてありますので、買う前に自分が使用してもよい薬なのかどうかをチェックしましょう。疑問があれば、薬剤師や登録販売者に相談しましょう。

3. 市販薬を使用するときに気をつけたいこと

(1) 使用前

       薬を使用する前に、 箱の裏書または薬と一緒に入っている添付文書をよく読んでから薬を飲むようにしましょう。添付文書には、注意点が詳しく記載されていますので、薬を使用するときには添付文書をよく読んでから使用する習慣を身につけると良いでしょう。

(2) 使用中

* 使用量、回数、時間を必ず守りましょう。
* 飲み忘れた時に1度に2回分使用することは絶対にやめましょう。1度に血中の薬剤濃度が上がり副作用が出やすくなります。
* 2~3日使用しても症状が改善されないときや悪化したときは、自己診断でずるずると同じ薬を使用せずに病院を受診しましょう。
* 副作用と思われる症状が出たときは直ちに使用を中止し、症状がひどいときは受診します。受診の時には、使用した市販薬を持参することをお勧めします。
* アルコールとの併用は避けましょう。どうしてもアルコールを飲みたい場合は薬を飲んでから少なくとも4時間は間隔をあけます

絶対にアルコールを飲んではいけない薬もあるので購入時に確認しましょう

(3) 使用後

 病気になった原因がある場合は、その原因を見直して改善し病気にならない体をつくりましょう。例えば便秘などは食生活などを改善することによって、薬に頼らなくてもよくなる場合があります。かぜも日常生活に注意することで予防できる場合も多いのです。手軽だからといって市販薬に頼るのではなく、病気にならないからだづくりを日頃から心がけましょう。

3. 市販薬を使用するときに気をつけたいこと

(1) 大人の薬を子供に飲ませてはいけません

 子供と大人では薬の吸収や解毒能力、排泄作用に大きな違いがあります。子供は大人を小型にしたものと考えて大人用の薬を半分にして飲ませるのは危険です。薬箱の裏に○歳以下服用禁止と書いてあるものは守りましょう。また、子供の用量が書かれていないものについては子供に使うのはやめましょう。なお、子供には特に避けるべき成分もあり、解熱鎮痛剤やかぜ薬では大人用に「小児に使用しないで下さい」と書かれているものもあります。絶対に使用するのはやめましょう。

(2) 漢方薬にも副作用はあります

 一般に漢方薬は西洋薬に比べて、作用が穏やかと考えられています。しかし、発疹、肝障害、アレルギー、下痢などの副作用が報告されています。また、何種類かの漢方を飲んでいる場合は成分が重なって、気がつかないうちに適量を超えている場合がありますので、薬剤師に相談して飲むようにしましょう。

(3) 冷やす?温める?湿布薬の使い分け

 よく迷ってしまうのが湿布の種類。冷湿布と温湿布ってどのように違うのでしょうか。
冷やすタイプの湿布薬は捻挫や打ち身のように、症状のある場所に炎症・腫れ・熱がある場合に用います。冷やして血管を収縮させることで、痛みなどの症状を取り除くという働きがあります。
温めるタイプの湿布薬は、肩こり・腰痛など、慢性的な痛みがある場合に使います。温めることで患部の血行を良くして、筋肉の緊張を和らげる効果があります。
どちらかはっきりしない場合は、基本的に気持ちが良い、心地よいと感じることを目安にするすると良いでしょう。ただし、長期間貼り続けると、炎症やかぶれ、かゆみが置きやすくなるので注意が必要です。

(4) キズの手当ては消毒が基本???

 すこし前までは、切り傷・擦り傷などは傷口を乾燥させて乾いたガーゼで治療することが常識でしたが、研究が進んだ現在は、「水道水で洗う」「消毒しない」「乾燥させない」のが手当ての3原則です。傷口から出る透明な浸出液には細胞の成長や再生を促す物質が含まれていて、皮膚の再生を促します。乾燥させないほうが治りも早く、傷痕も残りにくくなります。また、消毒薬によって皮膚の再生が阻害されるので、頻繁に消毒をしない方がよいのです。絆創膏もハイドロコロイド素材を用いた傷口を覆って適度な湿潤を保つタイプが市販されています。

      ハイドロコロイド素材を用いた絆創膏 →

手順

まず傷口を水道水(弱めの流水がよい)できれいに落としてから湿潤を保つタイプの絆創膏を貼り、溶けてドロドロが流れ出す頃になったら交換、流れ出さなくても5日間たったら交換します。頻繁に取り替えるとかえって治りが遅れてしまうので注意しましょう。ただし、ガラス片など異物が取れない、傷口がギザギザ、ズキズキと痛みが続く、出血が止まらないといった場合は、医療機関で治療を受けるようにしましょう。

(5) かぜ薬の眠気さましにコーヒー・紅茶はNG

 市販のかぜ薬には大抵カフェインが含まれています。そのため他の成分の影響でかぜ薬を飲んで眠くなったからといって、さらにコーヒー・紅茶を飲むと、カフェインを多量に取ることになり、頭痛やイライラなどの症状が出る可能性もあります。カフェインは1回量が300mgを超えないように気をつけましょう。
 よくかぜ薬と一緒に栄養ドリンク剤を勧められることがありますが、それで早く治るかどうかは少し疑問です。たとえば、カフェインを含むドリンク剤を飲んだために眠くなくなり、からだを休めることができなくなるということも有り得ます。かぜを治すには、栄養・休息・睡眠が基本です。また、熱が高くない場合、湯冷めに気をつければ、お風呂に入るのは問題ありません。清潔にして新陳代謝を高め、さっぱりすることでぐっすり寝られるなどの利点があります。

(6) 薬の保管は光を遮断して

 保管については、冷所保存・保管の指定があるもの以外は、室温保存する食品と同じような風通しのよい場所で保管すれば十分です。ただし、光に当ると成分が分解して、効力が劣化することが多いので、光は遮っておくほうがいいでしょう。
 何でもかんでも冷蔵庫に入れるのはお勧めしません。かえって湿気がついてよくない場合がありますし、子供が食品と間違えて食べてしまうこともあります。目薬を冷やすと気持ちがいいと言う人もいますが、本当は体温に近い方が余計な刺激を与えなくてよいのです。


手軽に買えて便利な市販薬。でもその使用には自己責任が伴います。市販薬も「薬」です。副作用があることを忘れずに、使用方法を守って上手に利用しましょう。
また、手軽に薬が手に入るからといって安易に薬にばかり頼っていては根本的な解決にはなりません。生活習慣の見直しと改善により、薬に頼らなくてもよいからだを目指しましょう。

自分の健康は自分で創り守っていく・・・セルフケアの達人になってよりよい人生を送ってください。


参考・引用: