健康の為のダイエット

2008年4月より特定健康診査(通称メタボ健診)が始まり、健康診断・人間ドックで腹囲が測定されるようになったことから、「ダイエット」ということに関心が高まったと感じています。実際ご自分にあった方法でダイエットを実行された方も多くいらっしゃいます。ダイエットというと「〇〇を制限する」「○○を我慢する」ことだと思われているかもしれません。だから健康診断直後の数ヶ月はがんばれても、息切れしてしまう、続かない、リバウンドしてしまうという経験をお持ちの方が多いのではないでしょうか。今回は健康管理のためのダイエットについて再確認したいと思います。

1.適正体重・体脂肪維持が目標
健康管理のためのダイエットは、体重、体脂肪の適正範囲を維持することです。BMI19.8~24.2、かつ、体脂肪率 男性14~23%、女性17~27%が適正範囲になります。体重は「太っている」「やせている」目安として考える最もポピュラーな数値です。「肥満」とは身長に比べ、体重の割合が大きい状態です。体重と身長がどのような関係にあり、それが生活習慣病やある種の病気に対してどのくらい危険率があるかを測る国際的な指標としてBMI(=Body Mass Index)があります。BMIは現在の体重(kg)÷身長(m)÷身長(m)で求められ、25以上は肥満となります。身長(m)×身長(m)×22という計算式で適正体重(kg)が算出できます。22をかけるのはBMI22であるときが一番病気にかかりにくく、死亡率が低いと言われているためです。現在の体重が適正体重を上回っている場合には、適正体重がダイエットの目標体重になります。しかし現在の体重が適正体重より1割以上多い場合には、1年間で現在の体重の1割減までを上限として目標体重を設定します。
身長170cm、73kgの人のBMIは73kg÷1.7m÷1.7m≒25.26で肥満です。適正体重は1.7m×1.7m×22=63.58kgになります。現在の体重が適正体重を1割以上上回っていますので、1年間で減量する目標体重は、73kg-7kg(現在の体重の1割減)=66kgになります。
体重と体脂肪は違う
しかし、体重はその中身を意味するものではありません。体脂肪(率)は、体重に占める「脂肪の割合」です。体重は適正範囲でも、体重に占める脂肪の割合が高ければ立派な肥満(俗にいう「かくれ肥満」)といえます。体脂肪率、男性30%以上、女性35%以上は肥満です。
ダイエットは、「食事」「有酸素運動」「筋トレ」が鍵
健康管理のためのダイエットには、「食事」「有酸素運動」「筋トレ」の実行が必須です。
[1]「食事」極端に食事の量を減らすあるいは欠食する、炭水化物など特定の食品を摂らない、あるいは特定の食品のみを摂るなどのダイエットでは体重が減ったとしても、「栄養のバランスが悪い」、「食べたい物を我慢している」、「摂取量が減ると生体の防衛反応が働き数少ない食べ物から効率的にエネルギーを吸収するようになる」などの理由からリバウンドにつながりやすいのが実状です。また食事のみのダイエットでは筋肉の量が減ってしまいますが、リバウンドするときには体脂肪が増えるため、消費エネルギーの小さい体になってしまいます。最近では体を維持するために必要なエネルギー量や栄養素はきちんと摂るダイエットは常識になりつつあります。しかし実際にはやり方がよくわからないためか難しいと感じられるようです。いまは食材別や献立別、食事の場など、さまざまな視点からのカロリーガイドブック※が市販されていますので、自分に合うと思うものを上手に活用することがダイエットの第一歩になるのではないでしょうか。
※「目で見る食品カロリー辞典」Gakken、「目で見る80キロカロリー食品ガイド」主婦の友社など
[2]「有酸素運動」私たちは筋肉の収縮によって運動していますが、このときにエネルギーが必要になります。このエネルギーは、アデノシン三リン酸(ATP)という物質が分解するときに発生します。私たちの体には多くのATPを貯蔵することができないため、運動を続けるためにはATPを改めてつくる「再合成」が必要になります。ATPを再合成する反応には、酸素の助けを必要とする「有酸素系ルート」と酸素を必要としない「無酸素系ルート」があります。有酸素系ルート(有酸素運動)であるウォーキングやジョギングは体脂肪を燃やす(減らす)ために有効ですが、筋肉の減少を抑制する効果がないことがわかってきました。
[3]「筋トレ」無酸素系ルートである筋トレは、筋肉量を維持するのに有効です。基礎代謝量は1日のエネルギー消費全体の7割を占めますが、基礎代謝によるエネルギー消費にいちばん貢献しているのが筋肉でその約4割に達します。筋肉量は加齢とともに減少します。筋肉量が減少すると基礎代謝量も減少します。食事と有酸素運動で一時的にダイエット効果が出たとしても、筋肉量が減少してしまってはリバウンドしやすくなります。加齢とともに筋肉量が大きく減るのは脚の筋肉ですが、筋肉は何歳になってもトレーニングで鍛えることができると言われています。
健康管理のためのダイエットプログラム(18歳~69歳)
ダイエットプログラムは、現在の生活習慣および健康診断/人間ドックの結果(経年変化)を考慮して個別に設定することが肝要ですが、一般的な目安は以下になります。
1日の摂取エネルギー量を計算しましょう。
●目標体重(kg)×基礎代謝基準値×身体活動レベル=1日の摂取エネルギー量kcalになります。
●基礎代謝基準値は、呼吸や血液循環、体温維持など生命活動を維持するために必要なエネルギーです。脂肪より筋肉の方がエネルギー消費量が大きいことから、加齢や運動不足による筋肉量の減少とともに基礎代謝量も減少します。  (基礎代謝基準値)
●身体活動レベルは、日常生活(職業生活や運動)で消費されるエネルギーで、変動的なものです。

(身体活動レベル)

年齢区分 低い:1日の生活の大半を座って過ごす

普通:座位仕事
+通勤、軽い運動習慣

高い:移動や立位仕事+活発な運動習慣
1869歳男女 1.5 1.75 2.0



●40歳男性、目標体重70kg、身体活動レベル普通の場合、70×22.3×1.75=1562kcalが1日の摂取エネルギー量で、これには食事はもちろん間食やアルコールも含まれます。
1日に摂取する食事内容のバランスを確認しましょう。
●食事は1日の摂取エネルギーの中で、3回に分けて、主食、主菜、副菜を揃えます。
●野菜は1日350gの摂取を目標にします。
●菓子類、糖分を含む清涼飲料水は控えます。水・お茶などの水分は過不足なく摂ります。
●アルコール飲料や菓子類を、主食に置き換える(ごはんを食べないでアルコールや菓子を摂る)ことは栄養バランスの面からは望ましくありません。



●1日のアルコールは、純アルコール量で20g以内が安全圏です。


➢望ましい身体活動量―健康づくりのための運動指針(2006厚生労働省)
身体活動(運動および生活活動の総和)として1週間に23エクササイズ(以下EX)以上を目標とします。その内訳は運動で4EX以上、残りを生活活動とします。表は1EXあたりの運動および生活活動の時間です。       
現在の体重(kg)×EX×1.05の計算式で身体活動によるエネルギー消費量が算出できます。
70kgの人が速歩1時間(4EX)した場合のエネルギー消費量は294kcalです。
現在治療中あるいは治療が必要な病気や症状(膝や腰に痛み)がある人は運動を始める前に運動の種類・量について必ず医師とよく相談するようにしてください。


オフィスで、自宅で、簡単にできる「筋トレ」5つの基本パターン
 呼吸を止めてしまうと血圧が上がるので、自然な呼吸をしながら行います。     
反動をつけると筋肉や関節に必要以上の力がかかってしまうので、ゆっくりと動かすことが大事です
 5種目を1日のメニューとして、週5回程度が実施の目安になります。
一度に5種目を実施しても、1日の中でバラして実施しても効果はほぼ同じです。
図中の  の部分を意識して実施しましょう

以 上
[参考文献]
「大学ダイエット講義」漆原光徳著 二見書房
「へるすあっぷ21」2009,No292 法研