冬は水虫治療のチャンス

水虫といえば、一昔前は、男性、お父さんの代名詞のような病気でしたが、今では女性、特に女子高生などの若い女性にも水虫患者は増加し、日本人の5人に1人が罹患していると考えられています。昔は、  夏季に患者数が増加し、冬季には減少すると言われていましたが、ブーツなどの通気性の悪い靴を履く方が増えたことにより、これから迎える冬場でも、水虫で悩む方は多いと言われています。また、病状が沈静化する冬場は、治療をするうえでも良い季節です。昔は、「治る水虫薬を開発したら、ノーベル賞もの」と 言われていましたが、今はそれが死語になるぐらいに、薬の開発も進んでいます。いつまでも 放っておき、家族にうつしてしてしまうのは、是非避けたいところです。お薬を正しく使って、日常生活を改善することが、水虫を完治させるKey Pointです。今回は、そのような視点から、水虫についての知識を増やしましょう!

1.水虫の正体はカビなんです

水虫とは、カビの一種である皮膚糸状菌(ひふしじょうきん)が、皮膚に  侵入して起こる病気です。この 皮膚糸状菌は一般的には白癬菌(はくせんきん)と言われています。水虫の正式名称は、浅在性白癬(せんざいせいはくせん)と言います。白癬菌が日本人により発見され、まだ、100年程度しか経っていませんが、「水虫」という言葉は、江戸時代の頃から、   田んぼ仕事をする季節になると、足にぽつぽつとした水疱(水ぶくれ)ができることから、使われていました。さらに、浅在性白癬は、感染する部位によって、頭部白癬(しらくも)、股部白癬(いんきんたむし)、体部 白癬(ぜにたむし)、足白癬(水虫)、手白癬(水虫)、顔面白癬、爪白癬なとど呼ばれます。この中で、最も 患者数が多いといわれている足白癬は、症状によって、以下の3つの型に分類されます。この分類は、 治療法の違いと関係してきます。

趾間型

足指の間にできる水虫。皮膚がむけて、ただれ、じゅくじゅくした状態にもなる。かゆみが強く、足先の蒸れ易い方に生じやすいタイプ。病初期にはかゆみを訴えないことが多い。冬季には症状が自然軽快する。

小水疱型

小さな水疱が足裏や側面にみられて、周囲は赤くなるタイプ。夏に多いといわれ、かゆみの強いのが特徴。病初期にはあまりかゆみを訴えないことが多い。症状は、梅雨時に現れ、秋には自然に消失することが多い。

角化型

足裏がカサカサし、厚くて硬くなるタイプ。かゆみはないものの、皮がボロボロとむけ、踵がひび割れ、あかぎれのようにみえることもある。

2.まずは、感染経路を知りましょう!

白癬菌が人の皮膚(角質層)に付着したからといってすぐに水虫になるわけではありません。次のような 条件を満たして初めて白癬菌が感染・寄生し、そして水虫となります。
 ①白癬菌が付着した
 ②白癬菌が洗い落とされず、しばらく皮膚にとどまった(24時間以上:傷ついた角層の場合は12時間 程度かかる)
 ③高温多湿(湿度70%・温度15℃以上)など白癬菌が増殖しやすい環境下にいた

具体的には、「ゴルフでシャワーを浴びた後、濡れたあしのまま靴下・靴を履き、自動車で帰る途中、   渋滞に巻き込まれる」、あるいは、「通学・通勤前にシャワーを浴びて、濡れたままの足で靴下・靴を履き、帰宅までそのままの状態でいる」などの状況が想定されますが、水虫を予防するためには、以上のような条件が揃わないように心がければ良いわけです。そのための方法を、次に説明します。

3.フット・スキンケアが大切です

水虫には、足の指をあまり動かさない、足の形が悪い、足の指と指の間に隙間がない、足に汗をかきやすい人などがなりやすいと言われて  います。水虫の方は、清潔にしようと思って、足を洗うとき、ついついゴシゴシと強くこすってしまいがちです。しかし、それでは、皮がむけてしまい、かえって、白癬菌を侵入しやすくしてしまいます。石鹸を使い、ぬるま湯で、隅々まで、あくまでもやさしく洗い、洗い終えたら、清潔なタオルで水分をしっかりとふき取ってあげることです。また、夏場は、水分除去と殺菌に適している制汗パウダーの利用もお勧めですし、最近評判の5本指の靴下も効果があります。 日常生活で心がける点としては、床掃除はこまめにする、毎日同じ靴を履かず何足か履き分ける、バスマット・スリッパ・タオルは別々にするなどの励行も必要です。とりわけ注意すべき点は、洗顔後に使用するタオルと足拭き用タオルは別々にすることです。洗濯する際の注意事項としては、白癬菌は、洗濯しても天日で干しても死滅ないということです。カビの弱点は乾燥と熱ですから、衣類乾燥機やアイロンを積極的に活用しましょう。


4.水虫の治療方法
皮膚は、大きく角質層、表皮、真皮、皮下組織からなります(右図参照)。水虫では、白癬菌が角質層にしか存在しないため、薬を飲む(内服)のではなく、患部に塗る外用療法が治療の第一選択となります。なぜならば、外用薬は、他の薬と相互作用して   副作用を生じることを考慮する必要がなく、全身的な副作用も きたすことがないからです。副作用があるとすれば、せいぜい かぶれることぐらいです。ただし、水虫でも、白癬菌が爪や毛に寄生した場合、外用療法は無効になります。手のひらや、足の裏に生じた水虫では外用薬を4週間以上外用し続けないと治癒しません。また、症状が消えてから、最低でも2週間は使用することが勧められています。市販されている水虫薬は、効果が確実にも関わらず治癒しない理由は、初めのうちは熱心に使っていても、症状が改善してくると中途半端で中止してしまうといったように、使用法に問題があるからです。「根気よく、持続的に」が基本です。また、薬を広い範囲で塗布すること、患部を清潔にし、かつ乾かして使用することも大切です。使用するに   当たっては、水虫のタイプ別に、剤型を選択する必要がありますので注意が必要です(下表参照)。

趾間型

軟膏やクリーム剤

小水疱型

水疱が破れていないときは液剤、破れている場合はクリーム剤

角化型

クリーム剤や軟膏

多くの水虫の薬が市販されていますが、まずは、ドラッグストアの薬剤師さんに相談をしてみてください。 市販の薬を使用しても改善しないときには、やはり皮膚科医への相談が必要となります。

5.間違った手当てが症状を悪化させてしまうこともあります
水虫かどうか疑わしい疾患として、接触性皮膚炎、湿疹、カンジダ症、掌蹠膿疱症(しょうせきのうほう   しょう)、アトピー性皮膚炎などがあります。これらの疾患の場合、水虫の治療をしても症状は改善しません。これらの疾患に対して、水虫の薬を使用しても、大きな副作用が出ることはありません。また、水虫の部分が化膿している場合は、まず化膿している部分を、抗生物質で治療してから、水虫の治療をしますし、  かぶれているときは、かぶれに対してステロイド軟膏で炎症を鎮めてから、水虫の治療を開始します。  水虫薬を使っても、改善が見られてないようなら、皮膚科医に診てもらうことをお勧めします。

6.最後に
「水虫はかゆい」とよく言われていますが、初期段階では、ほとんどの場合、痒みはありません。足のうらや指の付け根に小さな水ぶくれや、皮膚がむけたり、何か症状を見つけたら、まずは、皮膚科を訪ねて みましょう。また、糖尿病をもたれていたりすると、水虫が悪化して、細菌感染などが生じて、非常に治りにくくなることもあります。早めの相談が早めの治療につながりますし、感染を広げないことにもつながります。また、これから冬に入り、水虫が沈静化してきます。これまで再発を繰り返してなかなか治らなかった方も、これからの季節、治療を開始するチャンスです。毎年水虫でお悩みの方は、是非、皮膚科を受診され、相談されてみてください。

【参考文献・ホームページ】
●水虫は完治する 松村善一 著 月刊ことぶき 20057月号
●浅在性白癬の薬物療法 渡辺晋一 著 臨床 20066月号
水虫の症状と治療法 http://www.mizu-mushi.com/
水虫チャンネル http://www.japan-foot-week.gr.jp/
写真参照元:http://www.nakash.jp/iin/hihuka/31mizumushi.htm