特定保健食品を活用してみませんか?
「特定保健用食品」と聞いて皆さんは何を想像されますか?そうです。
いま、盛んにテレビや雑誌、新聞で宣伝されている「トクホ」のことです。スーパーやコンビニで左の印のついた商品を一度は目にされたり、実際に食べたり、又は、既に定期的に食べてまたは飲んで、健康的な生活の一助にされている方も多いと思います。このトクホですが、現在706品目(2007年9月26日現在)が登録されており、市場規模も6299億円(2005年度)と表1に示すように、健康意識への高まりとともに、年々増加しています。
今回は、この知っているようであまり知らないトクホの効果を説明します。自分の健診結果を参考に、自分にあったトクホを探してみてください。
Q1.特定保健用食品(トクホ)とは?
食品には生命維持のための一次機能(栄養)、食事を楽しむという二次機能(味覚)、そして体調のリズム調節や生体防御、疾病予防、疾病回復、老化防止などの健康を維持する三次機能(体調調節)があります。
「特定保健用食品」(トクホ)は、食品の持つこの三次機能(体調調節)に注目し、長年のアンバランスな食生活によって忍び寄ってくる生活習慣病の「危険要因(リスク)の低減除去」に役立つように工夫された食品で、健康に対してどのような機能をもっているかを表示することを、厚生労働大臣が許可した食品です。よって、特定保健用食品とは、あくまでも食品であって、薬品ではありません。そのため、薬品により生じる心臓の機能や呼吸の機能に影響を及ぼすような、重篤な副作用は生じませんが、過度に摂取すると牛乳を飲んで、お腹が痛くなる程度の軽い副作用は生じることはあります。上図で、トクホ効果の源である 「成分」を、トクホでは、
「関与成分」と呼んでいます。
Q2. 「健康食品」と特定保健用食品の違いは?
「健康食品」という言葉は、法令などにより定められているものでなく、一般に、「健康の保持増進に資する食品として販売・利用されるもの」を総称するものです。健康食品には、実際に「健康の保持 増進効果」があるかどうかが確認されているものもあれば、そうでないものもあります。このうち、国がその「健康の保持増進効果」を認めたものが「保健機能食品制度」で、保健機能食品には「特定保健用食品」と「栄養機能食品※」があります。その他の健康食品には、「健康補助食品」「栄養補助食品」「栄養強化食品」「栄養調整食品」「健康飲料」「サプリメント」といったものがありますが、これらは、国がその効果を確認したものではありません。つまり、特定保健用食品とは、国が健康への効用を示す表現をつけることを許可した「健康食品」なのです。
※
栄養機能食品:
主に、ビタミン、ミネラルといった人間の生命活動に不可欠な栄養素について、医学栄養学的に確立した機能の表示を行なった食品で、現在17成分(亜鉛、カルシウム、鉄、銅、マグネシウム、ナイアシン、パントテン酸、ビオチン、ビタミンB1、ビタミンB2、ビタミンB6、ビタミンB12、ビタミンC、ビタミンD、ビタミンE、葉酸)について、基準が定められています。
Q3.トクホの効果にはどのようなものがあるでしょうか?
効果として9種類の表示が認められていますが、ここでは代表的な6つについて説明をします。
◆@「お腹の調子をととのえる」等の表示をした食品
この効果が期待できる関与成分としては、@オリゴ糖A食品乳酸菌B食物繊維があります。オリゴ糖は選択的に善玉腸内細菌(ビフィズス菌や一部の乳酸菌など)に働き、腸内環境を改善する働きがあります。その結果、便の性状や便秘の改善をもたらします。その他に、腸内環境を改善させる方法として、善玉腸内細菌(食品乳酸菌)自体が含まれているもの(ヤクルトジョア)や、善玉腸内細菌を助ける細菌が含まれているもの(明治ブルガリアヨーグルト等)があり、結果的に同様の効果を期待できることになります。また、便秘の改善を期待して、食物繊維を胃で消化されにくくしているものを含む食品(ファイブミニ等)もあります。
◆A「コレステロールが高めの方に適する」表示をした食品
→最近の健診で、総コレステロール、LDL(悪玉)コレステロールが高いと言われた方にお勧め!
この効果が期待できる関与成分としては、植物ステロールエステルがあります。植物性ステロール エステルは、コレステロールの体内への吸収を抑える働きがあり、血中コレステロール、特に悪玉(LDL)コレステロールを下げるのが特長です。商品としては、食用大豆油の健康サララや、マヨネーズのピュアセレクトサラリア、キューピーディフェなどがあります。
◆B食後の血糖値の上昇を緩やかにする」表示をした食品
→最近の健診で、血糖値、HbA1cが高いとか、尿に糖が出ていると言われた方にお勧め!
この効果が期待できる関与成分としては、デンプンを原料に作られた水溶性の食物繊維の一種である、難消化性デキストリンやグァバ茶ポリフェノール、大麦アルブミン、豆鼓エキスなどがあります。 食事を取ると大量のインスリンが分泌されます。食後の血糖値の急上昇が繰り返されるとインスリンの分泌が悪くなり、血糖値が上昇し、最終的には糖尿病になってしまいます。難消化性デキストリンは、小腸での糖質吸収を穏やかにするので血糖値の上昇を緩やかにし、このインスリンの分泌が悪くなることを予防します。また、グァバ茶ポリフェノールや大麦アルブミン、豆鼓エキスは、ある種の酵素の働きを抑制することで、糖の身体への吸収を抑制し、血糖値の上昇を緩和します。商品としては、健茶王や蕃爽麗茶があります。
◆C「血圧が高めの方に適する」表示をした食品
→最近の健診で血圧がやや高いと言われた方にお勧め!
この効果が期待できる関与成分としては、酢から作られる酢酸、杜仲葉を抽出して得られる杜仲葉配合体、γアミノ酪酸、わかめや鰹節、乳製品から作られるペプチド等があります。酢酸は、直接血管に作用し、血流量を増し、血管抵抗値を下げる効果があります。杜仲葉配合体は、副交感神経に作用し、血管の平滑筋が弛緩し、血管抵抗値を下げる効果があります。γアミノ酪酸(GABA)は、交感神経の活動の亢進を抑制し、血圧を下げる効果があります。種々の物質から抽出されるペプチド(乳製品から抽出されるラクトトリペプチドやカゼインドデカペプチド、ゴマから抽出されるゴマペプチド、鰹節から抽出されるかつお節オリゴペプチドなど)は、血圧の調節に関係する酵素(アンギオンテンシン変換酵素と言います)の働きを抑制し、血圧を低下させます。商品としては、アミールエスや 胡麻麦茶などがあります。
◆D「歯の健康維持に役立つ」表示をした食品
この効果が期待できる関与成分としては、キシリトール、フクロノリ抽出物、リン酸-水素カルシウム、CPP-ACP等があります。キシリトール、フクロノリ抽出部、リン酸-水素カルシウムは、それぞれが 相補的に働いて脱灰層(歯の表面の成分が欠けた部分)全体にわたり強く再石灰化を促進します。CPP-ACPは歯の表面をコーティングしているエナメル質の表層下脱灰を抑制し、再石灰化を増強します。商品としては、ガムとして有名な、キシリトールやリカルデントなどがあります。
◆E「食後の血中中性脂肪が上昇しにくいまたは身体に脂肪がつきにくい」表示をした食品
→最近の健診で中性脂肪が高い、体脂肪率が高いと言われた方にお勧め!
この効果が期待できる関与成分としては、ウーロン茶重合ポリフェノール、ジアシルグリセロール、 中鎖脂肪酸(カプリル酸・カプリン酸)、茶カテキンなどがあります。ウーロン茶重合ポリフェノールは、ある種の消化酵素を抑制することにより、腸管からの脂肪吸収を抑制します。ジアシルグリセロールは、中性脂肪のもとであるトリアシルグリセロールになりにくいため、血中の中性脂肪の増加が抑制されます。また、ジアシルグリセロールは、中性脂肪を消費する脂質代謝を亢進させるため、体内への脂質の蓄積が抑制されます。中鎖脂肪酸には、「@消化管内での分解が極めて早く、速やかに 吸収されるA中性脂肪に再合成されにくいB吸収、酸化が早くエネルギーとして利用されやすいC食後の熱産生を増大する」ことが分かっており、体脂肪の蓄積を抑制します。茶カテキンには、「@体脂肪及び 食事性脂肪を燃焼させる作用があることA肝臓に作用して脂質の消費を増加させる作用があること」から、体脂肪を蓄積しにくくすると考えられています。商品としては、ヘルシア緑茶や、黒烏龍茶などがあります。
◆最後に
繰り返しになりますが、トクホは医薬品ではなく、食品です。トクホを使用していれば、高血圧や糖尿病が治癒するわけではありません。そのため治療目的の使用は避けてください。ただ、トクホは、生活習慣病の前段階にある人が、それほど抵抗感無く、気楽に試せる食品です。健診結果が、気になる方は、生活習慣の改善にあわせ補助として利用されてみてはいかがでしょうか?
《参考資料》
厚生労働省HP
http://www.mhlw.go.jp/topics/bukyoku/iyaku/syoku-anzen/hokenkinou/hyouziseido-1.html
「健康食品」の安全性・有効性情報HP
http://hfnet.nih.go.jp/
以上