粉じんと健康影響について


私たちの環境中には、身体に健康影響を及ぼす粉じんが少なくはありません。
今回は、粉じんの粒子の大きさや有害性についてお話します。

粉じんの大きさにより肺の奥へ到達するか否かは変わります
作業環境測定では粉じんを粒子の大きさによって@〜Bに分けており、通常はBの10ミクロン以下の微粒子が肺の奥の肺胞まで到達し有害であることから、測定の対象としています。
特別の有害性物質でない一般粉じんでも、作業時の許容濃度は、10mg/m3(Inhalable)3 mg/m3(Respirable)に規定されています。
 @Inhalable (粒子径範囲:大・50%:100ミクロン)鼻腔や気管に捕まる大きな粒子
 AThoracic (粒子径範囲: 025ミクロン・50%:10ミクロン)気管支や肺胞まで到達する
  微粒子

 BRespirable (粒子径範囲: 010ミクロン・50%:4ミクロン)肺胞まで到達する微粒子

肺がんを引き起こす発がん性物質
発がん性の粉じんやガスの主なものには、石綿(アスベスト)、カドミウム、クロム、シリカ、排気ガス、スパイクタイヤの粉じん、ニッケルやひ素(工場触媒の粉じんに含有)、ラドン(ウラン鉱山)などの放射能やタバコの煙などがあります。
特にタバコの煙は、1ミクロン以下の粒子やガスから成り、肺の奥の肺胞まで到達しそこに蓄積することから有害性は非常に高いものとなっています。

タバコの煙が肺に及ぼす影響
左のイラスト図はタバコの煙による慢性の炎症によって肺胞がつぶれてくっつきあい、肺に空気がたまって膨れ上がった状態を示しています。肺の弾力がなくなって空気を出し入れがしにくくなるうえに、膨れ上がった肺組織が気道を押しつぶすため、空気の通りが悪くなります。
右のイラスト図は、炎症により粘液の分泌が増え、セキやタンが続く状態を示しています。

 

 

 



慢性閉塞性肺疾患(COPD)
COPDとは、Chronic(慢性) Obstructive(閉塞性) Pulmonary(肺) Disease(疾患)の略で、これまで「慢性気管支炎」「肺気腫」と言われてきたものがほぼ含まれます。

右の写真は喫煙によりCOPDの状態になった実際の肺です。
 非喫煙者の肺は、きれいなピンク色をしていますが、喫煙者の肺はタバコのヤニが蓄積し黒くなっています。
 この病気の怖いのは治らないということ。
一生懸命治療をしても、確実に悪くなっていきます。マクロファージというタールなどの異物を取り除く役目の細胞が、自分の肺胞壁まで蛋白分解酵素で溶かしてしまうためだと考えられています。

COPDの症状
かぜでもないのにセキやタンが毎日のように続いたり、階段の上り下りなど体を動かしたときに息切れを感じます。
セキ・タン・息切れは呼吸器の病気の特徴的な症状です。年齢のせいにし見過ごしがちですが、健康であればセキやタンが毎日続いたり、歩いただけで息切れをすることはありません。

 

 

 



喫煙を継続していると、気管支や肺胞などの空気の通り道を刺激し、発がん物質が蓄積し、遺伝子が変化してしまい、いずれ肺の細胞ががん化して肺がんになるリスクが高くなります。

石綿(アスベスト)
石綿は、直径3ミクロン以下、長さ5ミクロン以上の繊維状のものを云います。下の写真は、電子顕微鏡で見た肺の中に蓄積した石綿繊維の様子を示しています。一般の粉じんとは異なり、長さが50ミクロン以上の繊維さえも、肺の奥の肺胞まで到達し、石綿繊維が肺に突き刺さっていることが分かります。アスベストを吸入するとじん肺(石綿肺)、肺がん、悪性中皮腫(肺を覆っている膜などにできるがん)に罹る危険性が高くなります。

 

 

 

 

 

 




健康対策
   タバコの場合
喫煙を直ぐにやめることです。タールやニコチンの少ないタバコも販売されていますが、軽いので深く吸い込んだり本数が多くなるため意味がありません。タバコに含まれる有害物質はタールやニコチン以外に沢山あります。現在、禁煙についてはニコチン代替療法(ニコチンパッチ、ニコチンガム)が行われ効果を上げています。ニコチンパッチについては保険適用されていますので、禁煙外来を実施している病院に相談してください。
その他の粉じん
タバコと同様、吸引しないことが大切です。10ミクロン以下の微粒子が肺の奥まで到達し有害なので、作業上の対策としては性能の良い防じんマスクの使用が考えられます。特に有害性の高い発がん性物質の粉じんが発生する作業には、粒子の捕集効率が99.9以上、密着性が良くマスクと顔との間からの漏れがないように装着することが重要になります。使い捨ての防じんマスクは、密着性良く装着できない場合が多いので、有害性の高い粉塵作業には不向きです。趣味で行う加工や切断における粉じん対策もしっかり取り組むことが必要です。
                                  以上

出典:  子供たちにタバコの真実を―37万人の禁煙教育から、かもがわ出版HP
      COPD-info.net
      
Comprehensive Catalog and Sampling Guide, SKC