運動の効果を高める食事のとり方


 みなさんは健康づくりのために運動をしていますか?「運動しても思ったほど効果が出ない」、「運動後はおなかが空いて食べ過ぎ、結局体重が増えた」などといった経験はありませんか?
 運動を習慣化することは健康維持に役立ちますが、その効果を十分得るためには運動前後の食事の内容やとり方が大事なポイントになります。
 健康づくりのために運動を続けている、またはしようと考えている人必見!今回は運動と食事の関係についてご紹介します。


1. 運動をする目的は?
 運動には大きく分けて2つのタイプがあります。
 1つは健康増進のための運動。毎日元気に働くため、また自分のやりたいことを満喫するためには、まず土台となる身体づくりが必要です。病気を予防し健康な身体を維持増進するための運動、があります。もう1つは競技としての運動。このような場合は競技そのものが目的になる場合が多く、競技に勝つために入念に研究してストイックに身体を鍛え上げ、大会や試合に臨んだりします。
 それぞれに運動する目的はありますが、今回は健康増進を目的とした運動をする場合に着目していきます。運動を行うことによって持久力や筋力を高め、生活習慣病を予防することが期待される運動の強度と量については次の通りです。
 まず強度としては、自分が「ややきつい」と感じる程度で運動すると効果的で、かつ安全に持久力を向上させることができます。速歩で言えば「ややきつい」とは、ちょっと息が弾むが笑顔が保てる、5分程度で汗ばんでくる、などといった強さです。これから運動を始める場合は「かなり楽である」と感じる強さから始め、「ややきつい」強さでの運動を目指して少しずつ強度を増していきましょう。
 そして運動量は、まず自分にどのくらいの量が必要かを確認してから開始することが大切です。厚生労働省からの『健康づくりのための運動指針20061)』にある体力レベルチェックを参考にして、ウォーキングやジョギングをする、あるいはジムに通うなど自分の体力や生活に合った運動を継続的に実施していきましょう。一例をご紹介しますと、メタボリックシンドロームを運動で解消するためには「普段の生活に10エクササイズかそれ以上の運動を加える2)」ことが目標となります。この10エクササイズ※は、週に5日以上、30分の軽く息がはずむ程度の運動(速歩など)を生活の中に加えたり、1日あたりの歩数をそれまでよりも毎日3000歩増加させたりすることで達成できます。
 さてこのような健康増進を目的とした運動をする場合に、運動効果を最大限に得るための食事のとり方についてここから説明していきます。
 ※エクササイズ…身体活動(安静にしている状態より多くのエネルギーを消費するすべての動き)の量の単位。



2. 運動の効果は?
 運動が身体に良いことは多くの人が知っていることだと思います。では運動をすることで具体的にどのようなメリットがあるのでしょうか?
 例えば図1のように運動にはたくさんのメリットがあります。運動をすることで消費エネルギーが増えて身体機能が活性化するため、代謝のよい身体がつくられます。さらに糖や脂質の代謝がよくなって内臓脂肪が減少すると、血糖値や脂質異常、血圧の改善が望め生活習慣病の予防につながります。このような運動によるメリットは、栄養との相乗作用でより強化することが可能です。
 日常生活の中に健康増進のための運動を取り入れていく中で、どんなタイミングでどんな内容の食事をすればよいか、次からご紹介していきます。


3. 運動前後の食事のポイント
 運動の効果を高めるために欠かせないのが、栄養バランスのよい食事を適切なタイミングで摂取することです。運動前後それぞれの場面に分けて考えてみましょう。

【運動前】
 まず運動前に何も食べないのは、ガソリンの少ない車でドライブすることと同じで長く動けません。血糖値が低下している状態なので、気分が悪くなったりフラフラしたりする危険性があります。また脳にエネルギーが送られにくいために集中力が保てず、思わぬ事故を招く恐れもあります。
 そのため運動前はエネルギー源であるごはん、パン、麺類などの炭水化物(糖質)を補給することを忘れないようにしましょう。
* 運動を始めるまでに1時間程度の余裕があれば、おにぎりやカロリーバーなどを摂取しましょう。脂質の多いものは消化に時間がかかるため避けるようにしましょう。
* 運動を始めるまでに30分程度しか時間がとれなければ、バナナやみかんなど消化吸収が早いものを選んで下さい。
* 運動前に何も食べられない状況なら、スポーツドリンクやゼリータイプのエネルギー補給飲料をとりましょう。ただし牛乳や乳飲料は消化吸収に時間がかかるため、運動直前には避けましょう。

【運動後】
 運動の効果を最大限に得るために、運動後に栄養を補給することは重要です。
 運動後は何も食べない、あるいは野菜料理だけでタンパク質を補給しないと筋肉がつかないだけでなく、翌日に疲れが残りやすくなります。消費したエネルギーを補給すると同時に体を修復するために、このタイミングで摂ってほしいのはタンパク質、糖質、ビタミン・ミネラル類です。
 運動後には牛乳や豆乳を飲んだり、タンパク質の素であるアミノ酸やプロテインなどを摂取しましょう。
 またエネルギー源として使われた糖質や運動で消耗したビタミン・ミネラル類を、素早く補給することも大切です。例えば柑橘系100%ジュース(オレンジジュースなど)や、果汁入り野菜ジュースなどのドリンクだとそれらを手軽に補給できます。疲労回復のためクエン酸入りの柑橘系を選ぶこともお勧めです。ただし運動後は代謝がよくなっているので、身体は栄養を吸収しやすい状態になっています。食欲にまかせて食べる、頑張ったご褒美にビールを好きなだけ飲む、ではエネルギー過剰摂取となり健康増進のための運動に繋がりません。運動後は食べ過ぎ・飲み過ぎないよう気をつけましょう。

例1: 夕食時に運動する場合
 終業後にジムに行く場合など、夕食をどうしようか迷いませんか?こういった場合は、夕食の1食分を運動前後に分けて食べるようにしましょう。例えば運動前におにぎりを2個食べた場合は夕食としてはおかずだけ食べるなど(右図例参照)工夫しましょう。おかずとしてはヒレ肉やモモ肉、鶏胸肉やささみ、また納豆・豆腐といった大豆製品など、低脂肪・高タンパク質の食品を選びましょう。調理法も蒸したり茹でたりして、油の少ない方法で食べるとより効果的です。そして身体の調子を整え、骨などの身体づくりに関わっているビタミンやミネラルが豊富な緑黄色野菜も忘れずに摂りましょう。

例2: 朝食・昼食時に運動する場合
 出勤前やお昼休みといった限られた時間にジョギング・ウォーキングされる方も多いと思います。この場合は運動前に果物や果汁飲料などで糖質を補給し、運動後にご飯も添えていつもの食事をとりましょう。


4. 運動をより効果的なものにするために
 いかがでしたか?運動しているのに効果がイマイチ感じられないと思っている方は、ぜひ食事のとり方を工夫してみてください。バランスのとれた栄養をとることが基本ですが「運動前に炭水化物、運動後にタンパク質とビタミン・ミネラル類を主に意識してとる」ことを知っておくとより効果的です。
 そのほか運動中の事故予防と運動後の疲労を軽減するために、その日の体調や天候に注意すること、持病のある人はかかりつけ医に相談してから始めることが大切です。ストレッチングなどの準備運動・整備運動1)も忘れずに行いましょう。
 ではみなさん、早朝ジョギングや終業後のジム通いなど皆さんの生活リズムに合わせた運動をより効果的にするために、食事をどのタイミングでどうとるかを知った上で楽しく続けていきましょう。


参考資料
1) 厚生労働省・健康づくりのための運動指針2006: http://www.mhlw.go.jp/bunya/kenkou/undou01/pdf/data.pdf
2) 特定保健指導における運動指導マニュアル NPO法人日本健康運動指導士会編集 (株)サンライフ企画
3) へるすあっぷ21 (株)法研10月号 2011.No.324 
4) 体脂肪を減らす特効BOOK 生活シリーズ 主婦と生活社