笑って健康ライフ!


 『笑う門には福来る』『笑いは百薬の長』など、昔からあることわざの通り「笑いは健康にいい」ということは皆さんもご存知かと思います。では笑いは実際に健康にどのような効果をもたらすのでしょうか?
 今回は身近ですぐ試せる「笑い」をテーマに健康を考えてみましょう。

1.笑いのメカニズム

 「笑い」とは一体どのような行為なのでしょうか?笑いが起こるには、まず人の顔や写真などを見たり、話を聞いたりした情報が脳に入ります。そして脳の中でどの中枢に伝わるかで笑いの種類が変わってきます。

 また笑いは連鎖があり、相手が笑うとこちらも自然と笑顔になります。それは相手の表情や声から感情を読み取り、同じ感情になるよう命令をだしているミラーニューロンというものが働くからです。

 笑いの作用は、右図のように笑いがおこると快楽ホルモンを分泌させストレスホルモンの分泌を抑える働きをします。その結果、免疫力が高まったり血糖値などを安定させたりすると考えられます。さらに笑うことで大量の酸素が取り入れられ、脳の働きが活発になり集中力もアップします。笑わせながら教育や説明をすると頭に入りやすいようですので、職場で応用できるかもしれません。


2. 笑いの効果

(1)血糖との関係
 笑いの効果を知る有名な実験があります。糖尿病の人に漫才を聞いて大笑いしてもらった後の血糖値の変化を調べるというものです。結果は食後2時間血糖値の上昇が抑えられていたそうです。笑いは血糖値の上昇を抑制する働きがある※1ということがその実験で証明されました。

(2)ストレスとの関係
 ストレスは体の中の活性酸素というものを増やすといわれています。増えた活性酸素は細胞の中にあるDNAを傷つけて、毎日5000個ともいわれるがん細胞を生み出します。しかし私たちの体に備わっている免疫システムの1つNK(ナチュラルキラー)細胞が、がん細胞を攻撃しているので通常は増殖せずに済んでいます。笑いはがんと戦ってくれる有り難いNK細胞を増やし免疫力も向上にも一役かっているといえます。
またストレスが増えると、私たちの心身のバランスを司っている自律神経系、内分泌系、免疫系の調和を乱し、からだや心の不調につながることもあります。笑うことは気持ちが穏やかになり、ストレスを溜め込まないこと(発散)に繋がります。

(3) 笑いと運動との関係
 笑いには運動効果もあります。皆さんは笑いすぎてお腹が痛くなった経験はありませんか?それは、お腹の底から笑うことで横隔膜が激しく上下し腹筋を使うからです。笑うことで消費エネルギーが安静時に比べて10〜20%増加する※2と言われています。これは1日あたり10〜15分笑うことで10〜40kcalを消費することになり、ウォーキングを5〜10分したのと同じくらいの消費量といえます。また表情を作る20種類以上の筋肉が動くため、無意識に顔の筋トレにもなるのではないでしょうか。

笑いには
  ● 血糖値の急激な上昇を抑える効果
  ● ストレスを発散し、心身のバランスを維持する効果
  ● 運動効果
があることがわかります。


3. 笑いを日常生活に取り入れましょう
 例えば、いつも笑顔のあの人を思い浮かべてください。
 社内で人とすれ違ったとき、微笑みながら会釈してみてください。
 たまには落語や喜劇などに行く予定を立ててみてください。
 笑いは生活習慣病予防やストレス解消の一助となるだけでなく、コミュニケーションのツールとしても有効です。笑いが生まれる環境を積極的につくり、笑いを日常に取り入れて生き生き過ごしましょう。
 ではここで、簡単にできる笑いのストレッチをしてみましょう。笑いがよいとわかっていても笑うネタがないと感じていらっしゃる方はぜひ試してみてください。毎日続けると普段の表情が変わるかもしれません。

【笑顔の作り方】

 手のひらで大頬骨筋を筋肉の流れに沿って持ち上げます。すると口角が上がり笑顔になります。自分でも口角が上がるよう意識しましょう。



 目の周りの眼輪筋をほぐします。眼輪筋は快楽な笑いの時に勝手に働きます。「目が笑っていない」と言われないよう、眉下の筋肉を軽く上下させ笑いの表情がおきやすくなるようにしましょう。

 今回は簡単な笑いのストレッチを紹介しましたが、そのほかにも笑いヨガ、ラフターヨガ、笑み筋体操などもありますので色々お試し下さい。
  ● 笑いヨガ: http://waraiyoga.org/
  ● ラフターヨガ: http://laughteryoga.jp/?option=com_frontpage&Itemid=1&lang=ja
  ● 笑み筋体操: http://www.emi-kin.com/
 
 でもどうしてもストレスが高いときや忙しくて余裕がないときなど、文字通り笑っていられない状況もあると思います。そういう場合は笑うマネをしてみましょう。笑い顔をつくるだけでも快楽ホルモンが分泌されたりNK活性が高まったりするといった効果があります。いつでもどこでもできますが、例えば朝起きて髭剃りやお化粧をするとき、トイレで手を洗うときなど鏡を見るタイミングに口角をあげてニッコリ笑うマネをしてみて下さい。つくり笑いも笑いのうち。笑いの効果を思い出しながら、鏡に向かって笑顔をつくってみましょう!
 最後に、笑いは健康によい影響を与えますが、笑うだけで病気を予防できたりするものではありません。生活習慣を見直し、バランスのとれた食事や適度な運動、そして通院中の方は適切な治療を受けることが基本です。笑いの健康効果を知り、今まで以上に生活にプラスしていきましょう。そして、笑いは感染するものです。自らの笑いで周りの人も笑顔にして共に健康ライフをおくりましょう!


(参考・引用)
・ ※ 1. Hayashi Kら,Diabetes Care誌,2003年
・ ※ 2. Buchowski MSら.International Journal of Obesity 誌,2006年
・ 笑いの医力 高柳和江著 西村書店
・ みんなの健康 笑いの健康学 伊丹仁朗著 三省堂
・ 日本笑い学会: http://www.age.ne.jp/x/warai/
・ 大阪府「笑いと健康」啓発冊子: http://www.pref.osaka.jp/attach/4002/00029624/waraisasshi.pdf
・ 挿絵: http://www.asahi.com/health/jhcolumn/070130/